「その頃私の神経は、刃の擦り切れたやすりのように、鋭敏な角々がすっかり鈍って、余程色彩の濃い、あくどい物に出逢わなければ、何の感興(かんきょう)も湧かなかった。」
Context | Focus | Standard | Context |
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刃の擦り切れたやすり | 神経 | 鋭敏な角々がすっかり鈍って |
Category | |
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1 | 直喩・シミリ (simile) |
2 | アナロジー・類推 (analogy) |
3 | 擬物法・結晶法 (hypostatization) |
4 | 人物描写 (description of a character) |
Lexical Slots | Conceptual Domain |
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A | Target |
B | Source |
C | Elaboration |
Preceding | Morpheme | Following | Usage | |
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1 | A | は | C | は-既出のものに関する判断の主題 |
2 | B | の[ように] | C | の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合 |
3 | B | [の]ように | C | 様-類似-連用形 |
Category | Effect |
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アナロジー・類推 (analogy) | すり切れたやすりに心を比することで、角が無くなったやすりは相当に目立った凹凸がないと引っ掛からないのと同様に、心が様々な刺激に慣れて鈍麻しており、相当に強い刺激でないと何も感じない様子を表現する。 |
擬物法・結晶法 (hypostatization) | やすりになぞらえることによって、心という直接には知覚できない対象に物理的な形や凹凸が与えられている。 |
人物描写 (description of a character) | 刃のすり減ったやすりになぞらえることで、その頃の「私」が置かれた精神状態が描かれている。 |