目次

「瀬の早い渓川のところどころに、澱んだ淵が出来るように、下町の雑沓に挟まりながら閑静な一郭(いっかく)が、なければなるまい」

Page Type Example
Example ID a0864
Author 谷崎潤一郎
Piece 「秘密」
Reference 『谷崎潤一郎』
Pages in Reference 25

Text

ちょうど瀬の早い渓川(たにがわ)のところどころに、澱(よど)んだ淵(ふち)が出来るように、下町の雑沓(ざっとう)する巷(ちまた)と巷の間に挟まりながら、極めて特殊の場合か、特殊の人でもなければめったに通行しないような閑静な一郭(いっかく)が、なければなるまいと思っていた。

Context Focus Standard Context
瀬の早い渓川のところどころに、澱んだ淵が出来る 下町の雑沓する巷と巷の間に挟まりながら、極めて特殊の人でなければめったに通行しないような閑静な一郭がある

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 谷川 = 山手 山手=小川
2 流れ = 人出 人出=流動
3 = 閑静 静か=ふち

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Target
C Elaboration

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 ちょうど A ちょうど(ちょうど)
2 A ように C 様-類似-連用形
3 B C が-主語
4 C ば[なるまい] ば-仮定の順説条件
5 C [ば]なる[まい] 変質する(へんしつする)
6 C [ばなる]まい まい-否定的意志-終止形

Pragmatics

Category Effect
アナロジー・類推 (analogy) 人通りの多い街の裏側にひっそりとした秘密の空間ができることを、人通りを川の流れに比し、街を川に比する類比関係を形成することで、川に生じる淀みをイメージさせ、その秘密の空間がどういうものであるかを想起しやすくさせる。
明晰 (clarity) 人通りの多い街の裏側にひっそりとした秘密の空間ができることを、人通りを川の流れに比し、街を川に比する類比関係を形成することで、川に生じる淀みをイメージさせ、その秘密の空間がどういうものであるかをわかりやすくさせる。