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「先生と大きな声をされると、午砲(どん)を聞いたような気がする」

Page Type Example
Example ID a0802
Author 夏目漱石
Piece 「坊っちゃん」
Reference 『夏目漱石』
Pages in Reference 38

Text

いよいよ学校へ出た。初めて教場へはいって高い所へ乗った時は、何だか変だった。講釈をしながら、おれでも先生が勤まるのかと思った。生徒はやかましい。時々図抜(ずぬ)けた大きな声で先生と云(い)う。先生には応(こた)えた。今まで物理学校で毎日先生先生と呼びつけていたが、先生と呼ぶのと、呼ばれるのは雲泥(うんでい)の差だ。何だか足の裏がむずむずする。おれは卑怯な人間ではない。臆病な男でもないが、惜おしい事に胆力が欠けている。先生と大きな声をされると、腹の減った時に丸の内で午砲(どん)を聞いたような気がする。

Context Focus Standard Context
腹の減った時に丸の内で午砲を聞いた 大きな声をされる

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 午砲 = 大声 無声=烽火

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A さ[れると] B する(する)
2 A [さ]れる[と] B れる-直接受身-終止形
3 A [される]と B と-きっかけ
4 B ような[気がする] 様-類似-連体形
5 B [ような]気[がする] 気(き)
6 B [ような気]が[する] が-主語
7 B [ような気が]する する(する)

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) すきっ腹に午砲が響くという物理的な反響のイメージによって、赴任しはじめで先生と呼ばれることに馴れてなく、大声で先生と呼ばれると心理的な動揺が大きいことを表す。