目次

「鳶は中空から石のごとくに落ちて来る」

Page Type Example
Example ID a0786
Author 中島敦
Piece 「名人伝」
Reference 『中島敦』
Pages in Reference 17

Text

ちょうど彼等の真上、空の極めて高い所を一羽の鳶が悠々と輪を画いていた。その胡麻粒ほどに小さく見える姿をしばらく見上げていた甘蠅が、やがて、見えざる矢を無形の弓につがえ、満月のごとくに引絞ってひょうと放てば、見よ、鳶は羽ばたきもせず中空からのごとくに落ちて来るではないか。

Context Focus Standard Context
落ちて来る

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 = とんび わし=石ころ

Grammar

Construction AはBのごとくにC
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Elaboration

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A C は-既出のものに関する判断の主題
2 B の[ごとくに] C の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
3 B [の]ごとく[に] C ごとし-類似-連用形
4 B [のごとく]に C に-行われ方・あり方

Pragmatics

Category Effect
擬物法・結晶法 (hypostatization) 鳥が下方に移動するのは滑空などが想定されるが、当該のトンビが無機物のように落ちると表現することで矢が確かにトンビを射貫き、トンビが死んでいて意志をもって飛行しているのではないことを表している。
イメジャリー・イメージ (imagery) 石を高所から落とす際の真っ逆さまに落ちていくイメージを用いて、鳶が真っ直ぐに落下していく様子を表す。