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「見えざる矢を無形の弓につがえ、満月のごとくに引絞ってひょうと放てば」

Page Type Example
Example ID a0785
Author 中島敦
Piece 「名人伝」
Reference 『中島敦』
Pages in Reference 17

Text

ちょうど彼等の真上、空の極めて高い所を一羽の鳶が悠々と輪を画いていた。その胡麻粒ほどに小さく見える姿をしばらく見上げていた甘蠅が、やがて、見えざる矢を無形の弓につがえ、満月のごとくに引絞ってひょうと放てば、見よ、鳶は羽ばたきもせず中空から石のごとくに落ちて来るではないか。

Context Focus Standard Context
満月 引き絞って

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 満月 = 弓矢=月

Grammar

Construction AのごとくにB
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Target

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A の[ごとくに] B の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
2 A [の]ごとく[に] B ごとし-類似-連用形
3 A [のごとく]に B に-行われ方・あり方

Pragmatics

Category Effect
誇張法 (hyperbole) 弓は通常、円になるほど引き絞ることはないため、「満月」の喩えによって本当に円形に見えるほどであることを強調している。
イメジャリー・イメージ (imagery) 円形と完全性のイメージをもつ満月を引き合いに出すことで、弓を引きしぼって構えた様子の審美性を表現する。