目次

「云わば恋の創痕(きずあと)の痂(かさぶた)が時節到来して脱(と)れたのだ」

Page Type Example
Example ID a0746
Author 幸田露伴
Piece 「太郎坊」
Reference 『幸田露伴』
Pages in Reference 25-26

Text

ただ一人遺っていた太郎坊は二人の間の秘密をも悉(くわ)しく知っていたが、それも今亡(むな)しくなってしまった。水を指さしてむかしの氷の形を語ったり、空を望んで花の香の行衛を説いたところで、役にも立たぬ詮議というものだ。昔時を繰返して新しく言葉を費したって何になろうか、ハハハハ、笑ってしまうに越したことは無い。云わば恋の創痕(きずあと)の痂(かさぶた)が時節到来して脱(と)れたのだ。

Context Focus Standard Context
恋の創痕の痂が時節到来して脱れた (太郎坊が割れた)

Rhetoric

Semantics

Grammar

Construction 言わばAのBがC
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 言わば AのBがC 言わば(いわば)
2 A B の-抽象的な場所
3 B C が-主語

Pragmatics

Category Effect
擬物法・結晶法 (hypostatization) 恋の未練を実体化し、時間と共に身体から分離し離れていくものとして捉えている。
含意法 (implication) かさぶたが時間の経過によって取れるという平凡な事象を引き合いに出すことで、恋の未練を語ることが特別な行為ではないことを示唆する。