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「暗夜の海にも譬へようず煩悩心」

Page Type Example
Example ID a0735
Author 芥川龍之介
Piece 「奉教人の死」
Reference 『芥川龍之介』
Pages in Reference 208

Text

その女の一生は、この外に何一つ、知られなんだげに聞き及んだ。なれどそれが、何事でござらうぞ。なべて人の世の尊さは、何ものにも換へ難い、刹那の感動に極るものぢや。暗夜の海にも譬へようず煩悩心の空に一波をあげて、未出ぬ月の光を、水沫の中に捕へてこそ、生きて甲斐ある命とも申さうず。

Context Focus Standard Context
暗夜の海 煩悩心

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 = 煩悩 欲=海

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Target

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A に[も喩えようず] B に-比較の基準
2 A [に]も[喩えようず] B も-既知のものと同様(副詞的修飾語)
3 A [にも]喩え[ようず] B 踏む(ふむ)
4 A [にも喩え]ようず B undefined

Pragmatics

Category Effect
過大誇張 (auxesis) 煩悩という心的状態を、夜の海に比することで、暗さが迷妄の状態を表し、海の深さや広さが煩悩の尽きないことを表現する。