目次

「日輪が地に落ちて、天火が迸つた」

Page Type Example
Example ID a0700
Author 芥川龍之介
Piece 「地獄変」
Reference 『芥川龍之介』
Pages in Reference 137

Text

火は見る見る中に、車蓋をつゝみました。庇についた紫の流蘇が、煽られたやうにさつと靡くと、その下から濛々と夜目にも白い煙が渦を巻いて、或は簾、或は袖、或は棟の金物が、一時に砕けて飛んだかと思ふ程、火の粉が雨のやうに舞ひ上る――その凄じさと云つたらございません。いや、それよりもめらめらと舌を吐いて袖格子に搦みながら、半空までも立ち昇る烈々とした炎の色は、まるで日輪が地に落ちて、天火が迸つたやうだとでも申しませうか。

Context Focus Standard Context
日輪が地に落ちて、天火が迸つた 烈々とした炎の色

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 落ちる = 炎=落ちる
2 ほとばしる = 炎=ほとばしる

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Target
C Elaboration

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A は[まるで] B は-既出のものに関する判断の主題
2 A [は]まるで B ちょうど(ちょうど)
3 B ようだ[とでも] C 様-類似-終止形
4 B [ようだ]と[でも] C と-引用語句
5 B [ようだと]でも C でも-より適当なものがあるかも知れぬという気持

Pragmatics

Category Effect
明晰 (clarity) 太陽という極めて高温の事物が地上に落ちるという仮定的な事態をイメージさせることで、その火事の尋常一様ならざる凄惨な様子を分かりやすく表現する。
風景描写 (scene-description) 太陽の落下という仮想的な出来事を引き合いに出し、その結果として想像される事態をつうじて炎の色を描いている。