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「虎狼と一つ檻にでもゐるやうな心もち」

Page Type Example
Example ID a0697
Author 芥川龍之介
Piece 「地獄変」
Reference 『芥川龍之介』
Pages in Reference 118

Text

その癖、屏風の何が自由にならないのだか、それは誰にもわかりません。又、誰もわからうとしたものもございますまい。前のいろいろな出来事に懲りてゐる弟子たちは、まるで虎狼と一つ檻にでもゐるやうな心もちで、その後師匠の身のまはりへは、成る可く近づかない算段をして居りましたから。

Context Focus Standard Context
虎狼と一つ檻にでもゐる 心もち

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Elaboration
B Source
C Target

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A は[まるで] C は-既出のものに関する判断の主題
2 [は]まるで ちょうど(ちょうど)
3 B ような[心持ちで] C 様-類似-連体形
4 B [ような]心もち[で] C 気持ち(きもち)
5 B [ような心もち]で C で-状態・態度・立場

Pragmatics

Category Effect
明晰 (clarity) 虎と一緒の檻に入るという仮想的な状況を設定し、凶暴な虎を刺激して襲われないように気をつける檻の中の人物の慎重さを想起させることで、師匠を恐れてなるべく近づかないようにしている弟子たちの様子を具体化している。
イメジャリー・イメージ (imagery) 当該文脈とは内容的に独立し、かつ具体的な状況を持ち出すことで、映像的な理解を促している。
ユーモア (humour) 「虎狼」と同じ檻にいるという尋常でない場面であることが、大仰な印象を与え、滑稽さを演出している。
心理描写 (psychological-description) 虎狼と同じ檻に入れられるという仮想的な設定を持ち出すことで、弟子たちが師匠に対して抱いていた恐れを描いている。