目次

「まるでそれが永久に成功しない事でも祈るような冷酷な眼」

Page Type Example
Example ID a0653
Author 芥川龍之介
Piece 「蜜柑」
Reference 『芥川龍之介』
Pages in Reference 23

Text

だから私は腹の底に依然として険しい感情を蓄えながら、あの霜焼けの手が硝子戸を擡(もた)げようとして悪戦苦闘する容子を、まるでそれが永久に成功しない事でも祈るような冷酷な眼で眺めていた。

Context Focus Standard Context
祈る 冷酷な

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 祈る = 冷酷な 酷=願う

Grammar

Construction まるでAようなB-C
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Elaboration
C Target

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 まるで A ちょうど(ちょうど)
2 A ような B 様-類似-連体形
3 B - C 統語関係

Pragmatics

Category Effect
心理描写 (psychological-description) 霜焼けの手でなかなか戸を開けることができない人物を見ている当該人物の視線について、その行為が永久に成功しないことを祈るという冷淡な祈願を提示することで、人に対する当該人物の酷薄な感情を宿したものであることを表現する。
人物描写 (description of a character) 霜焼けの手でなかなか戸を開けることができない人物を見ている当該人物の視線について、その行為が永久に成功しないことを祈る様子を提示することで、当該人物の酷薄な人柄が示唆される。
明晰 (clarity) 容子の行為が永久に成功しないことを祈るという冷淡な祈願を引き合いに出すことで、当該人物の表情が具体的に想起される。