目次

「皮膚にも似た紙片の中に、自分の母を生んだ人の血が籠っている」

Page Type Example
Example ID a0627
Author 谷崎潤一郎
Piece 「吉野葛」
Reference 『谷崎潤一郎』
Pages in Reference 269

Text

津村はその中に通っている細かい丈夫な繊維の筋を日に透かして見て、『かかさんもおりとも此かみをすくときはひびあかぎれに指のさきちぎれるようにてたんとたんと苦ろういたし候』と云う文句を想い浮かべると、その老人の皮膚にも似た一枚の薄い紙片の中に、自分の母を生んだ人のが籠っているのを感じた。

Context Focus Standard Context
紙片の中に (魂) が籠っている

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 = 魂=血

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
主観化 (subjectification) 紙が文章を間接的に表し、その文章のなかに、書き手の魂が込められていると感じられるという点で、ここでは「血」が魂を意味している。
アナロジー・類推 (analogy) 紙が皮膚に喩えられていることにより、皮膚のなかにある文字通りの「血」の意味も感じられる。
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擬物法・結晶法 (hypostatization) 親から子に受け継がれる血のように、手紙の中に書き手の思いが具体的な形をとって受け継がれているような印象を与える。