Page Type | Example |
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Example ID | a0620 |
Author | 谷崎潤一郎 |
Piece | 「吉野葛」 |
Reference | 『谷崎潤一郎』 |
Pages in Reference | 235 |
「気が付いてみると、いつの間にか私たちの行く手には高い峰が眉近く聳えていた。空の領分は一層狭くちぢめられて、吉野川の流れも、人家も、道も、ついもうそこで行き止まりそうな渓谷であるが、人里と云うものは挟間があればどこまでも伸びて行くものと見えて、その三方を峰のあらしで囲まれた、袋の奥のような凹地の、せせこましい川べりの斜面に段を築き、草屋根を構え、畑を作っている所が菜摘の里であると云う。」
Context | Focus | Standard | Context |
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吉野川の流れも、人家も、道も | 行き止まり | (なくなり) |
Construction | |
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Mapping Type |
Lexical Slots | Conceptual Domain |
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Preceding | Morpheme | Following | Usage |
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Category | Effect |
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重義法・秀句 (pun) | 「行き止まり」は、道が文字通りに先がなくなることと、人家が見当たらなくなることの二重の意味で解釈できる。 |
風景描写 (scene-description) | 道の「行き止まり」になぞらえて、語り手の周囲に広がる渓谷の景色の変化を描く。 |
アナロジー・類推 (analogy) | それまでは続いていた道が「行き止まり」で終わり、その先には道が続いていない。この「行き止まり」の構造を引き合いに出すことで、それまでは風景の中に広がっていた吉野川や人家、道が、そこから先ではもう見られなくなった、という変化がわかりやすく表現されている。 |