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「種々雑多の傀儡(かいらい)が香の煙に溶け込んで」

Page Type Example
Example ID a0501
Author 谷崎潤一郎
Piece 「秘密」
Reference 『谷崎潤一郎』
Pages in Reference 31

Text

畳の上に投げ出された無数の書物からは、惨殺、麻酔、魔薬、妖女、宗教———種々雑多の傀儡(かいらい)が、香の煙に溶け込んで、朦朧と立ち罩(こ)める中に、二畳ばかりの緋毛氈を敷き、どんよりとした蛮人のような瞳を据えて、寝ころんだまま、私は毎日々々幻覚を胸に描いた。

Context Focus Standard Context
傀儡が…煙に 溶け込んで (紛れて)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 溶け込む = 紛れる まがう・まごう=溶ける

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
心理描写 (psychological-description) 無数の書物に書かれた種々の陰惨なことばが、その部屋の中に立ち込める香の煙と渾然一体と交わっているかのように見えていることが表現される。
描写 (description) 部屋がもつ重苦しい陰鬱な雰囲気が描かれている
列挙法・列挙・列叙 (enumeration) 「溶け込む」主体である書物のテーマが列挙して記述されている。それによって、無数の書物に書かれた種々の陰惨なことばが、その部屋の中に立ち込める香の煙と渾然一体と交わっているかのような印象を与える。