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「薄白い雲が高い巌壁をも絵心に蝕んで」

Page Type Example
Example ID a0331
Author 幸田露伴
Piece 「観画談」
Reference 『幸田露伴』
Pages in Reference 107

Text

渓の上手の方を見あげると、薄白い雲がずんずんと押して来て、瞬く間に峯巒(ほうらん)を蝕み、巌を蝕み、松を蝕み、忽ちもう対岸の高い巌壁をも絵心に蝕んで、好い景色を見せてくれるのは好かったが、その雲が今開いてさしかざした蝙蝠傘(こうもり)の上にまで蔽いかぶさったかと思うほど低く這下って来ると、堪らない、ザアッという本降りになって、林木(りんぼく)も声を合せて、何の事はないこの山中に入って来た他国者をいじめでもするように襲った。

Context Focus Standard Context
雲が 絵心に () 蝕んで

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 = 景色 景=絵

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
主観化 (subjectification) 雲のかかり方が絵画的であるという語り手の評価を、雲が「絵心」を持って、かかり方を工夫しているかのように捉え、客観的描写に投影している。
迫真法・活写法・現前化 (hypotyposis) そのとき目に入った雲の様子をあるがままに率直に描写している。