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「天にも地にもたった一人の身よりである」

Page Type Example
Example ID a0278
Author 夢野久作
Piece 「いなか、の、じけん」
Reference 『夢野久作全集第1』
Pages in Reference 60

Text

提灯の主は元五郎といって、この道場と浴場の番人と、それから役場の使い番という三ツの役目を村から受け持たせられて、森の奥の廃屋に住んでいる親爺で、年の頃はもう六十四五であったろうか。それが天にも地にもたった一人の身よりである、お八重という白痴の娘を連れて、仕舞湯に入りに来たのであった。

Context Focus Standard Context
天にも地にも () たった一人の身より

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
対照法・対照 (antithesis) 天から地という世界の両極を提示し、その空間的な広さを想起させることで、そのような広大な空間でありながらも、一人しか身寄りがいないことを空間的な広さと人数の少なさというコントラストがはっきりと感じられる。
誇張法 (hyperbole) 「身より」がある可能性があるのは、「地」、すなわち現世のみと考えると、「天にも」は冗長であるように感じられる。身よりが「たった一人」であることを強調している。
誇張法 (hyperbole) 世の中の全てを完全に探し回ったとしても身よりは白痴の娘だけである、という事実が際立たせられており、その孤独感がよりはっきりと感じられる。