目次

「太陽も、四方八方から私を包み殺そうとして来るように思われるのです」

Page Type Example
Example ID a0245
Author 夢野久作
Piece 「瓶詰地獄」
Reference 『夢野久作』
Pages in Reference 40

Text

そうするとこの島の中に照る太陽も、唄う鸚鵡も、舞う極楽鳥も、玉虫も、蛾も、ヤシも、パイナプルも、花の色も、草の芳香も、海も、雲も、風も、虹も、みんなアヤ子の、まぶしい姿や、息苦しい肌の香とゴッチャになって、グルグルグルグルと渦巻き輝やきながら、四方八方から私を包み殺そうとして、襲いかかって来るように思われるのです。

Context Focus Standard Context
太陽も…私を 包み殺そうとして () 来るように思われる

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 殺す = 知覚する 感じる・感ずる=殺す

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Target
C Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A C も-既知のものと同様(主語)
2 B C も-既知のものと同様(主語)
3 C ように[思われるのです] 様-類似-連用形
4 C [ように]思わ[れるのです] 思う(おもう)
5 C [ように思わ]れる[のです] れる-自然-連体形
6 C [ように思われる]の[です] の-「〜のだ」
7 C [ように思われるの]です です-断定(丁寧)-終止形

Pragmatics

Category Effect
擬人法 (personification) 島の自然物が意志を伴う殺人行為の主体であるかのような印象を与える。
心理描写 (psychological-description) 島の自然物を殺人行為の主体として表現し、その殺意が周りに充満しているものとすることで、近親相姦の誘惑に苛まれ、聖書を焼いた二人が感じる恐怖が描かれている。
人物描写 (description of a character) 周囲の環境からやってくる極度に強く混沌とした刺激の全てに、人を殺そうとするような明確で統一的な意思が感じられた、という主観的認識が表現されている。そのような知覚・認識の様子から、「私」の過度の敏感さと取り乱し具合が見てとれる。