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「この島は天国のようでした」

Page Type Example
Example ID a0237
Author 夢野久作
Piece 「瓶詰地獄」
Reference 『夢野久作』
Pages in Reference 34

Text

私はよくアヤ子を生徒にして、聖書の言葉や、字の書き方を教えてやりました。そうして二人とも、聖書を、神様とも、お父様とも、お母様とも、先生とも思って、ムシメガネや、ビール瓶よりもズット大切にして、岩の穴の一番高い棚の上に上げておきました。私たちは、ホントに幸福で、平安でした。この島は天国のようでした。

Context Focus Standard Context
天国 この島 平安でした

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 天国 = 島=天国

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A B は-一般的事物に対する判断の主題
2 B の[ようでした] の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
3 B [の]ようでし[た] 様-類似-連用形
4 B [のようでし]た た-過去-終止形

Pragmatics

Category Effect
誇張法 (hyperbole) 絶海の孤島で聖書を読みながら妹と二人きりで暮らす生活に、邪なものや穢れが一切なかったという印象を与える。
引用・引喩 (quotation) 「天国」という宗教用語を利用することで、自分達の置かれた状況に対する「私」の認識が具体的に想起される。
対照法・対照 (antithesis) この状況を天国と表現することで、後に近親相姦の誘惑にさいなまれ、タイトルである「瓶詰地獄」にもある地獄という状況との対比がつくられる。
描写 (description) 孤島で暮らすという状況と、それに対する「私」の認識が重ね合わせられながら描かれている。