目次

「笛の音は、最後の審判の日のらっぱよりも怖ろしい響で御座いました」

Page Type Example
Example ID a0235
Author 夢野久作
Piece 「瓶詰地獄」
Reference 『夢野久作』
Pages in Reference 28

Text

大きな船から真白い煙が出て、今助けに行くぞ……というように、高い高い笛の音が聞こえて来ました。その音が、この小さな島の中の、禽鳥や昆虫を一時に飛び立たせて、遠い海中に消えて行きました。けれども、それは、私たち二人にとって、最後の審判の日のらっぱよりも怖ろしい響で御座いました。

Context Focus Standard Context
最後の裁判の日のらっぱ 笛の音 よりも怖ろしい響

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 らっぱ = 汽笛 烽火=らっぱ

Grammar

Construction AはBよりもC-D
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Elaboration
D Elaboration

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A C は-一般的事物に対する判断の主題
2 B より[も] C より-比較対象の引合い
3 B [より]も C も-既知のものと同様(副詞的修飾語)
4 C - D 統語関係

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 近親相姦というタブーを犯した発話者にとって、船の来訪はその事実を明るみに出してしまうことである。そのように自身のタブーを強く意識させ、恐怖を喚起する汽笛の音に対する印象・評価を最後の審判の日に吹き鳴らされるラッパの怖ろしさを引き合いに出すことで具体的に想起させる。
心理描写 (psychological-description) 最後の審判のらっぱになぞらえることで、船から聞こえた笛の音が発話者にもたらした印象が描かれている。
引用・引喩 (quotation) 「最後の審判」という宗教用語を活用することで、船から聞こえた笛の音の恐ろしさの程度が具体化されている。