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「顔がつるつるしてまるで薬缶だ」

Page Type Example
Example ID a0222
Author 夏目漱石
Piece 「吾輩は猫である」
Reference 『夏目漱石』
Pages in Reference 203

Text

掌の上で少し落ちついて書生の顔を見たのがいわゆる人間というものの見始(みはじめ)であろう。この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。第一毛をもって装飾されべきはずの顔がつるつるしてまるで薬缶(やかん)だ。その後猫にもだいぶ逢ったがこんな片輪(かたわ)には一度も出会(でく)わした事がない。のみならず顔の真中があまりに突起している。

Context Focus Standard Context
つるつるしてまるで 薬缶

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 やかん = 顔=湯沸かし

Grammar

Construction AがBてまるでCだ
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Elaboration
C Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A C が-主語
2 B C て-原因・理由
4 C だ-断定・指定-終止形

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 人間の毛が生えていない顔に、薬缶のつるりとした凹凸のない滑らかな質感が感じられる。
擬物法・結晶法 (hypostatization) 金属でできた物体である薬缶になぞらえることで、顔の表面が凹凸のない質感であるということが際立たせられる。
人物描写 (description of a character) 猫からすると顔は毛が生えていることが当然だが、人間にそれがないことへの違和感を暗示する。