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「自分は、その猛魚に足を喰切られた哀れな優しい牝蛸だ」

Page Type Example
Example ID a0179
Author 中島敦
Piece 「夫婦」
Reference 『中島敦』
Pages in Reference 222

Text

他処からモゴルに来たあの女ときたら、淫乱な牝豚だ。母を知らない家無し女だ。歯に毒をもったヤウス魚。兇悪な大蜥蜴(とかげ)。海の底の吸血魔。残忍なタマカイ魚。そして、自分は、その猛魚に足を喰切られた哀れな優しい牝蛸だ。

Context Focus Standard Context
その猛魚に足を喰切られた哀れな優しい牝蛸 自分

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 たこ = 自分 自分=軟体動物

Grammar

Construction AはB-Cだ
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A C は-一般的事物に対する判断の主題
2 B - C 統語関係
3 C だ-断定・指定-終止形

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 夫を寝取った女を猛魚として表象することで、その残酷さが想起される。同時に、その女からの被害を被った自分の姿を蛸になぞらえることで、その弱々しさが具体的に想起される。
人物描写 (description of a character) 獰猛な魚たちに捕食される存在である牝蛸になぞらえることで、「自分」の被害者としての弱い立場が描かれている。
心理描写 (psychological-description) 足を喰い切られた蛸になぞらえることで、「あの女」に対する被害感情が描かれている。
誇張法 (hyperbole) 「足を食切られる」イメージによって、「あの女」から受けた被害の大きさが強く感じられる。
アナロジー・類推 (analogy) 猛魚と蛸の関係をもとに「あの女」と「自分」との加害ー被害関係が明確になる。
対照法・対照 (antithesis) 猛魚と蛸の関係をもとに「あの女」と「自分」との対立的な関係が明らかになる。