目次

「あの女ときたら、海の底の吸血魔」

Page Type Example
Example ID a0177
Author 中島敦
Piece 「夫婦」
Reference 『中島敦』
Pages in Reference 222

Text

他処からモゴルに来たあの女ときたら、淫乱な牝豚だ。母を知らない家無し女だ。歯に毒をもったヤウス魚。兇悪な大蜥蜴(とかげ)。海の底の吸血魔。残忍なタマカイ魚。

Context Focus Standard Context
海の底の吸血魔 (リメイ)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 魔物 = 女=魔

Grammar

Construction AはB-C
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A C は-一般的事物に対する判断の主題
2 B - C 統語関係

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 自身を罵倒する妻について、その醜さや猛烈さを魔物という非人間的な架空の生物に託し、海の底に住む設定とすることで、そこに引きずりおろされた自己の哀れさ、血(生気/精気)を吸われる自分自身の姿を暗示する。
人物描写 (description of a character) 一連の比喩によって「あの女」の下劣さを描いている。
評価 (evaluation) 一連の比喩によって「あの女」に対する否定的評価を示している。
過大誇張 (auxesis) 吸血魔のたとえが女への罵倒の強さを増幅させる。
漸層法・クライマックス (climax) 比喩の列挙が進むにしがって否定的評価がより強く感じられる。