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「あの女ときたら、母を知らない家無し女だ」

Page Type Example
Example ID a0174
Author 中島敦
Piece 「夫婦」
Reference 『中島敦』
Pages in Reference 222

Text

他処からモゴルに来たあの女ときたら、淫乱な牝豚だ。母を知らない家無し女だ。歯に毒をもったヤウス魚。兇悪な大蜥蜴(とかげ)。海の底の吸血魔。残忍なタマカイ魚。

Context Focus Standard Context
母を知らない家無し女 リメイ

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 みなしご = 女=忘れ形見

Grammar

Construction AはB-Cだ
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A C は-一般的事物に対する判断の主題
2 B - C 統語関係
3 C だ-断定・指定-終止形

Pragmatics

Category Effect
明晰 (clarity) 女性に対する罵倒の一つとして、雌豚という非人間を持ち出すことで、非理性的であり人間に劣るという価値評価を表示し、「淫乱な」と指定することで性的に奔放な豚の姿が喚起され、その姿に対する嫌悪感などによって、さらに低い価値評価を示す。
人物描写 (description of a character) 一連の比喩によって「あの女」の下劣さを描いている。
評価 (evaluation) 一連の比喩によって「あの女」に対する否定的評価を示している。
過大誇張 (auxesis) 家無し女のたとえが女への罵倒の強さを増幅させる。
漸層法・クライマックス (climax) 比喩の列挙が進むにしがって否定的評価がより強く感じられる。