目次

「夫は下痢をした猿」

Page Type Example
Example ID a0171
Author 中島敦
Piece 「夫婦」
Reference 『中島敦』
Pages in Reference 222

Text

貞淑な妻を裏切った不信な夫は奸悪な海蛇だ。海鼠の腹から生れた怪物だ。腐木に湧く毒茸。正覚坊の排泄物。黴(かび)の中で一番下劣な奴。下痢をした猿。羽の抜けた禿翡翠(かわせみ)。

Context Focus Standard Context
下痢をした猿

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 = 夫=霊長類

Grammar

Construction A-BはC-D
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Target
C Source
D Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A - B 統語関係
2 B D は-一般的事物に対する判断の主題
3 C - D 統語関係

Pragmatics

Category Effect
明晰 (clarity) 妻を裏切った夫というものは低劣であり価値がないという評価を背景にした罵倒の中で、猿という非人間に人をなぞらえ、それが下痢をするという汚らしい様子として指定することで、夫がいかに低劣であるかを明確に表す。
人物描写 (description of a character) 一連の比喩によって、「不信な夫」の下劣さを描いている。
評価 (evaluation) 一連の比喩によって夫に対する否定的評価を示している。
過大誇張 (auxesis) 下痢の猿のたとえが、妻の夫への罵倒の強さを増幅させる。
漸層法・クライマックス (climax) 比喩の列挙が進むにしがって否定的評価がより強く感じられる。