目次

「夫は海鼠の腹から生れた怪物だ」

Page Type Example
Example ID a0167
Author 中島敦
Piece 「夫婦」
Reference 『中島敦』
Pages in Reference 222

Text

貞淑な妻を裏切った不信な夫は奸悪な海蛇だ。海鼠の腹から生れた怪物だ。腐木に湧く毒茸。正覚坊の排泄物。黴(かび)の中で一番下劣な奴。下痢をした猿。羽の抜けた禿翡翠(かわせみ)。

Context Focus Standard Context
海鼠の腹から生れた怪物

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 怪物 = 夫=怪物

Grammar

Construction A-BはC-Dだ
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Target
C Source
D Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A - B 統語関係
2 B D は-一般的事物に対する判断の主題
3 C - D 統語関係
4 D だ-断定・指定-終止形

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 妻を裏切るという行為を働いた夫を非人間的な怪物という異形の存在になぞらえることで、妻の罵倒の強さが分かりやすく表現されている。
人物描写 (description of a character) 一連の比喩によって、「不信な夫」の下劣さを描いている。
評価 (evaluation) 妻から夫に対して発せられた罵詈雑言の比喩によって否定的評価を示している。
過大誇張 (auxesis) 怪物のたとえが、妻の夫への罵倒の強さを増幅させる。
漸層法・クライマックス (climax) 比喩の列挙が進むにしがって否定的評価がより強く感じられる。