目次

「麺麭(パン)の樹に鳴く蝉時雨の如く、罵詈雑言が夫の上に降り注いだ」

Page Type Example
Example ID a0158
Author 中島敦
Piece 「夫婦」
Reference 『中島敦』
Pages in Reference 222

Text

椰子の葉を叩くスコールの如く、麺麭(パン)の樹に鳴く蝉時雨の如く、環礁の外に荒れ狂う怒濤の如く、ありとあらゆる罵詈雑言が夫の上に降り注いだ。

Context Focus Standard Context
麺麭の樹に鳴く蝉時雨 罵詈雑言 降り注いだ

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 せみ時雨 = 罵詈雑言 ののしり=鐘声

Grammar

Construction AのごとくBがC
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Target
C Elaboration

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A の[ごとく] C の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
2 A [の]ごとく C ごとし-類似-連用形
3 B C が-主語

Pragmatics

Category Effect
誇張法 (hyperbole) 多数の蝉が鳴きしきる様子に擬えることで罵詈雑言のやかましさが強く感じられる。
明晰 (clarity) 多数の蝉が鳴きしきる様子に擬えることで、罵詈雑言のやかましさの程度が具体的に想起される。
混合比喩 (mixed metaphor) 次々に異なる比喩のイメージを導入している。イメージとしては南洋的な素材が統一されているため、比喩の反復によって、大きな比喩のイメージを導入しているとも解釈できる。
擬物法・結晶法 (hypostatization) 罵詈雑言に液体状の物理的な形態があるかのように感じられる。