======= 「私の古い空想はその場で壊れてしまった」 ====== |< 60% 30%>| ^ Page Type | Example | ^ Example ID | a2428 | ^ Author | [[name:kaji00030127]] | ^ Piece | [[piece:kaji000009987527-aibu]] | ^ Reference | [[reference:kaji000009987527]] | ^ Pages in Reference | 38 | == Text == 「そんなわけで、耳を引っ張られることに関しては、猫はいたって平気だ。それでは、圧迫に対してはどうかというと、これも指でつまむくらいでは、いくら強くしても痛がらない。さきほどの客のように抓(つね)って見たところで、ごく稀(まれ)にしか悲鳴を発しないのである。こんなところから、猫の耳は不死身のような疑いを受け、ひいては『切符切り』の危険にも曝さらされるのであるが、ある日、私は猫と遊んでいる最中に、とうとうその耳を噛かんでしまったのである。これが私の発見だったのである。噛まれるや否や、その下らない奴は、直ちに悲鳴をあげた。私の古い空想はその場で__壊れて__しまった。猫は耳を噛まれるのが一番痛いのである。悲鳴は最も微(かす)かなところからはじまる。だんだん強くするほど、だんだん強く鳴く。Crescendo のうまく出る――なんだか木管楽器のような気がする。 |<80%>| ^ Context ^ Focus ^ Standard ^ Context | | 空想は | 壊れて | (なくなって) | しまった | * 作品冒頭に「猫の耳というものはまことに可笑(おか)しなものである。薄べったくて、冷たくて、竹の子の皮のように、表には絨毛(じゅうもう)が生えていて、裏はピカピカしている。硬いような、柔らかいような、なんともいえない一種特別の物質である。私は子供のときから、猫の耳というと、一度「切符切り」でパチンとやってみたくて堪(たま)らなかった。これは残酷な空想だろうか?」とある。 * 耳が一番痛いことを現実で確かめてしまったので、空想の結果が予測できるようになり、空想ではなくなってしまったことを表していると解釈した。 == Rhetoric == |<60% 30%>| ^ ^ Category | ^ 1 | [[category:metaphor]] | ^ 2 | [[category:hypostatization]] | ^ 3 | [[category:ireiketsugo]] | ^ 4 | [[category:psychological-description]] | == Semantics == |<80% 10%>| ^ ^ Source ^ Relation ^ Target ^ Pattern | ^ 1 | [[source:2.1572-1|壊れる]] | = | [[target:2.1250-1|なくなる]] | [[mapping:metaphor--2.1572-1--2.1250-1]] | == Grammar == |<60% 30%>| ^ Construction | | ^ Mapping Type | |   |<60% 30%>| ^ Lexical Slots ^ Conceptual Domain |   |<80% 10%>| ^ ^ Preceding ^ Morpheme ^ Following ^ Usage ^ == Pragmatics == |< 80% 30%>| ^ Category ^ Effect | | [[category:hypostatization]] | 心的な営みによって構築された空想が、壊れてしまった具体物のように、もう元には戻せなくなってしまったという印象を与える。 | | [[category:ireiketsugo]] | 「空想」という抽象体に対して、「壊れる」という物理的な破損を表す動詞を結び付ける。 | | [[category:psychological-description]] | 「私」の心の中で空想が元に戻せなくなった様子を表現する。 | {{tag> index:ex name:kaji00030127 piece:kaji000009987527-aibu reference:kaji000009987527 category:metaphor category:hypostatization category:ireiketsugo category:psychological-description mapping:metaphor--2.1572-1--2.1250-1 source:2.1572-1 target:2.1250-1 annotator_example:A-Tamaru annotator_semantics:K-Kambara annotator_semantics:T-Komatsubara annotator_pragmatics:R-Kikuchi annotator_pragmatics:Y-Hirakawa }}